キズナ 血統考察

血統考察

キズナ 戦績

キズナ(日本) 牡馬 2010年3月5日生 青鹿
戦績:国内12戦6勝/海外2戦1勝
1着実績:日本ダービー(G1)/大阪杯(G2)/京都新聞杯(G2)/ニエル賞(G2)/毎日杯(G3)
2着実績:大阪杯(G2)
3着以下実績:京都記念(G2)3着/ラジオNIKKEI2歳S(G3)3着/天皇賞春(G1)4着

震災復興のシンボルホース

キズナは2010年3月5日にノースヒルズにて産まれた。
父ディープインパクト、母は名牝キャットクイルである。
キャットクイルはファレノプシス、サンデーブレイクの母で、半姉にはビワハヤヒデ、ナリタブライアンの母パシフィカスがいる名門血統
キャットクイルは2014年1月9日にこの世を去っている。

キズナは出生時から評判はかなり高く、牧場スタッフからは「単勝1倍台で無敗の3冠馬になる」とまで言われていた。
1歳時の担当マネージャーは「柔軟な筋肉を纏い、馬体のバランスが素晴らしく、心肺機能も抜群で、調教後も息が上がらず元気いっぱいです」と最大級の評価をしている。
また、管理先の佐々木晶三調教師は「初めてキャンターを見たとき、ディープインパクトそのままの走りでした。着地の時間がすごく短く、すぐに次の動作に入る。これは大物になると思いました。これで獲れなかったら(ダービー)私は最悪の調教師です。」と言っている。

2012年10月7日の京都芝1800mでデビューし、1番人気に応えて勝利する。
2戦目の黄菊賞も後方から差し切り2勝目を挙げる。
3戦目はG3ラジオNIKKEI2歳Sではエピファネイアに競り負けて3着に敗れる。

3歳の初戦はG2弥生賞に出走するも、5着に敗れ皐月賞の出走権を取ることはできなかった。
次走はG3毎日杯で、上がり最速の脚を繰り出し圧勝で初重賞勝利を飾った。
皐月賞は見送り、G2京都新聞杯に出走すると他馬を圧倒し重賞2勝目を挙げる。
満を持してG1日本ダービーに出走
単勝1番人気に推され、2着エピファネイアをゴール前で差し切り優勝した。
史上初の同騎手父仔ダービー制覇、そして青鹿毛の初のダービー馬となった。

日本ダービー優勝後、フランス凱旋門賞のステップレースとしてニエル賞に向かう事を表明した。
ニエル賞ではイギリスダービー馬ルーラーオブザワールドの追撃を凌ぎ勝利。
そして本番の凱旋門賞では道中後方2番手から、フォルスストレートでオルフェーヴルと共に上がっていったがトレヴの4着に終わった。

4歳古馬になって初戦、G2大阪杯で1番人気単勝1.9倍の支持に応え勝利する。
続くG1天皇賞春でも1番人気単勝1.7倍の支持を受けるが、フェノーメノの4着に敗れる。
レース後に骨折が判明し長期休養となる。

2015年5歳になり、G2京都記念から始動するも9カ月の休み明けプラス22㎏という事もあり3着に敗れた。
続くG2大阪杯では単勝1.4倍の圧倒的1番人気に推されるもののラキシスの2着に敗れた。
そして、結果的にラストランとなってしまったG1天皇賞春では1番人気に推されるが、ゴールドシップの7着に敗れてしまう。
レース後に凱旋門賞を断念することを発表し、秋は国内に専念する事を発表した。
しかし、右前脚屈腱炎を発症したことが判明し、そのまま引退することになった。

引退後は社台スタリオンステーションにて種牡馬として繁養されている。

キズナ 見解

キズナは東日本大震災の復興シンボルとなったダービー馬です。
キズナという名前は生産のノースヒルズ前田オーナーが、トランセンドで臨んだ2011年ドバイワールドカップ(1着ヴィクトワールピサ、2着トランセンド)で、世界中の人々から日本を思いやる言葉をもらい、それに感銘を受けて当時牧場で1番評価の高かった馬にキズナ(絆)という名前を付けました

私はこの「キズナ」という名前を付けた事が前田オーナー(ノースヒルズ)の成功に繋がったと思っています。
邪推なのかも知れませんが、これを戦略としてやっていたとすれば凄い事です。
「キズナ(絆)」という名前を付ける事によって

  • 牧場スタッフのテンションも上がり、責任感が強くなる
  • 佐々木調教師のキズナに対する扱いが違ってくる
  • JRA(農林水産省)としてもうってつけのキャラクターになる
  • 競馬ファンからも確実に愛される
  • ドラマチックになる

未だにダービーの時期になると、キズナのダービー制覇の映像をよく目にします。
それはそうです、ディープの仔で鞍上は武豊騎手、そして名前は「キズナ」、最後の直線で大外からエピファネイアを差してガッツポーズですよ…これ以上ない場面です。
これが「キズナ」という名前じゃなかったら、鞍上が武豊騎手じゃなかったら、これほどドラマチックにはなっていません。

冷静に、そして客観的にみると、キズナはこのダービーしかG1タイトルを獲得していません。
ラジオNIKKEI2歳Sではエピファネイアに完敗(3着)してますし、弥生賞では5着(1着カミノタサハラ)に惨敗しています。
戦績を見ると正直化け物クラスではありませんし、骨折、屈腱炎と丈夫でもありませんでした。
しかし、この魔法のような名前「キズナ」は、見るものに強いイメージを与え、関係者の責任感を強くさせました。
その後、ノースヒルズは3冠馬コントレイルを生産します。

私は2011年に東日本大震災が発生し、日本全体が落ち込んでいるときにドバイワールドカップで勝利したヴィクトワールピサに感動しました。
それは震災直後で、後付けでもなく、何か人とは違う力を感じました。
演出では到底及ばない感動がそこにあったと思っています。

キズナ 種付け推移

  • 2016年/種付け頭数:269頭/種付け料:250万円
  • 2017年/種付け頭数:212頭/種付け料:250万円
  • 2018年/種付け頭数:152頭/種付け料:350万円
  • 2019年/種付け頭数:164頭/種付け料:350万円/37位
  • 2020年/種付け頭数:242頭/種付け料:600万円/8位
  • 2021年/種付け頭数:192頭/種付け料:1000万円
  • 2022年/種付け頭数:   /種付け料:1200万円

この数字を見て思うのは、社台SSがそれほど高く購入していないという事と2020年からの上がり方が凄いという事です。
初年度が250万円というのは結構リーズナブルな価格設定だと思います。
良血ではありますが、実績的にはG1を1つしかないですからね。

2020年に種付け料が急に上がったのは2019年にディープインパクトが亡くなった影響でしょう。
まだこの時、初年度産駒は3歳になったばかりなので産駒成績の影響はほとんどないと思います。
ただ、2021年に種付け料が1000万円の大台に乗ったのは驚きです。
サイアーランキング37位→8位という事でしょうが…それにしても高いですね。

ディープインパクト産駒が2022年デビュー馬で最後になります。
ずっと1位だったリーディングホースが抜け、さらにキングカメハメハも抜けます。
現段階ではロードカナロアとキズナで争うのでは?と言われていますが…果たしてどうなるでしょうか。。。

キズナ 血統

キズナ 5代血統表

父:ディープインパクト(日本)
母:キャットクイル(CAN)
母父:Storm Cat(USA)
3代母父:Damascus(USA)

サイアーライン:ディープインパクト(サンデーサイレンス系)
父母ライン:アルザオ(リファール系)
母父ライン:ストームキャット(ストームバード系)
ボトムライン:ダマスカス(テディ系)
強調因子:ストームキャット

母キャットクイル(父ストームキャット)はカナダ産で2戦0勝で繁殖入り
初仔はG1を3勝した女傑ファレノプシス(父ブライアンズタイム)で、3番仔にアメリカダートG2ピーターパンSを勝利、G1ベルモントS3着の実績があるサンデーブレイクがいます。
ただ、キャットクイルは不受胎が多く、キズナを出産したのが20歳という高齢出産でした。

祖母のパシフィックプリンセス(父ダマスカス)はアメリカで23戦7勝でG1デラウェアオークスを勝っています。
その仔パシフィカス(父ノーザンダンサー/キャットクイルの半姉)はビワハヤヒデとナリタブライアンの母として有名です。

キズナの血統表は教科書のような血統表です。
所謂ディープ×ストームキャットNIXと呼ばれる有名な配合です。
ディープは弱点が無い(穴が無い)血統構成なので、ストームキャットのパワー寄りのスピードをチョイ足す感じです。
キズナはスピードはもちろん、ディープ譲りのバネもあります。
母系から受け継いだ500㎏前後の馬体はパワーも兼ね備えます。
ただ、ディープインパクト系のデメリットである成長力の無さとサンデーサイレンス系のデメリットである屈腱炎をも受け継いでしまいました。

何度も言うようですがディープインパクト産駒は優秀な牝馬を出す血統です。
キャットクイルの最高傑作はブライアンズタイム産駒のファレノプシスです。
タラレバにはなってしまいますが、キズナがもし牝馬だったら…個人的な見解ですが凱旋門賞を勝っていたんじゃないかと思っています。

キズナ 産駒

キズナの代表産駒として

  • アカイイト/牝馬/2017年生/エリザベス女王杯(G1)
  • ディープポンド/牡馬/2017年生/阪神大賞典(G2)
  • バスラットレオン/牡馬/2018年生/NZトロフィー(G2)
  • ソングライン/牝馬/2018年生/富士S(G2)
  • マルターズディオサ/牝馬/2017年生/チューリップ賞(G2)
  • ファインルージュ/牝馬/2018年生/紫苑S(G3)

やっぱり牝馬ですよね
先日の2022年天皇賞春で、1番人気のディープボンドがタイトルホルダーに負けました。
逆に2021年のエリザベス女王杯では10番人気のアカイイトが勝利しました。
こういう感じなんですよ…ディープ系は
牝馬のソングラインやファインルージュなんか大きいところ獲りそうです。
逆に牡馬は古馬になってからG1獲るイメージがないです。

代表産駒の血統を見ると面白いです。
牝馬は母父がほとんどがアメリカ血統で牡馬は欧州血統が多いです。
アカイイトとソングラインが母父シンボリクリスエス(ロベルト系)で、ファインルージュがボストンハーバー(ボールドルーラー系)で、マルターズディオサがグランドスラム(ミスプロ系)で、すべてアメリカ産の母父、硬めのスピードタイプです。

ディープボンドの母父はキングヘイロー(リファール系)、バスラットレオンはニューアプローチ(サドラーズウェルズ系)、アスクワイルドモアがゼンノロブロイ(サンデーサイレンス系)で、どちらかというと柔らかいスピードタイプになります。

このようにキズナ産駒の牝馬はアメリカ血統で硬めのスピード因子が合い、牡馬は欧州や日本血統で柔らかいスピード因子が合うと言えます。
これは馬体重にも影響が出て、アカイイトやファインルージュは牝馬ながら500㎏クラスの大型馬で、ソングラインも牝馬にしては大きめの480㎏クラスです。
逆に牡馬のアスクワイルドモアなんかは牡馬にしては小さめの460㎏クラスです。

あと、キズナ産駒は早熟説がありますが、私はちょっと違うと思っています。
キズナ産駒に限らずディープ系の産駒は完成度(成長度)の到達が早いんですよね。
もちろん個体差はありますが、ディープ系は当歳馬からずっと馬体バランスが崩れない仔が多いです。
逆にハーツクライ産駒やハービンジャー産駒なんてガタガタで成長していきます。
ただ、ディープ産駒でもフィエールマンやグローリーヴェイズなんかは完成が遅かった馬もいます。
だから、早熟というよりも個々の完成度で判断するのがベストだと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました